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60km/hでEVにならないのはなぜ?フリードHV(GB7)を3年ログして分かったこと・外れた予想

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どうもこんにちは!まろんです!

今日は我が家のFREED HYBRID(GB7)で3年前からずっと気になっていた「なんで60km/hだとEVにならないの問題」、ついに重い腰を上げてOBDログで調べてみました!

3年前に書いた記事で「そのうち原因を調べます」と言ったきり、放置していた宿題です…皆さんも「絶対いつか調べる」って言ったまま忘れてる車の謎、ひとつやふたつありませんか?

先に結論だけ言っておきます。原因そのものは特定できませんでした。ただしネットで定番の「バッテリー保護でしょ」という説明は、電圧を実測して否定できました。あわせて、3年前からの体感と、私が途中で立てた予想が、それぞれ外れています。今日はそれを正直に全部書きます。

目次

3年前、「いつか調べる」と言ったまま放置してました

うちのFREED HYBRID(GB7)、60km/hくらいで巡航していると、バッテリー残量は十分あるはずなのにエンジンがずっとかかったままになることがあります。3年前の「EVならない病」の研究記事では、この現象を運転感覚だけで書いていました。

当時から気づいていたのは4つの体感です。①アクセルを5秒以上完全に離すと解消する、②解消しても再始動すると再発する、③そもそも発症しないこともある、④一度解消するとエンジンを切るまで再発しない。この4つでした。

当時は「EVは奇数段(1・3・5・7速)でしか起きない」という仕様を根拠に、体感を並べただけで終わっていました。今回はOBDログを8ラウンドかけて検証しています。運転中の勘だけで書いていた4つの体感が、3年越しにどう答え合わせされるのか。正直、書いている本人が一番ドキドキしています。

「EVならない病」って結局何なのか?先に5つに整理します

コミュニティを横断調査してみたところ、「EVならない病」と呼ばれる報告は速度域だけでも「40〜60km/h」「57km/h以上」「60〜85km/h」とバラバラでした(非公式ソース1件のみ・みんカラ/価格.comの投稿横断調査より)。同じ俗称の下に、少なくとも5系統の別現象が混ざっていたんです。

系統代表的な報告根拠の強さ
①低速渋滞・上り坂の1速放電(いろは坂問題)みんカラ/Togetter非公式ソース1件のみ
②高SOC域の回生カット(下り坂の過充電防止)みんカラ(グレイス)非公式ソース1件のみ
③水温・速度トリガーの高SOC維持走行(うちの症状に近い)みんカラ(フィット3代目)非公式ソース1件のみ
④エアコン負荷起因の充電異常価格.com(フリード2016)非公式ソース1件のみ
⑤ECU/DCT重大故障(クラッチ滑り)みんカラ(ジェイド)非公式ソース1件のみ・故障と混同注意

(b)については補足が要ります。当初は「CSVファイルの区切り=エンジンの再始動」と考えて数えようとしたのですが、CarScannerの公式ドキュメントを読むとファイルが確定するのは「Disconnectを押したとき」か「記録をオフにしたとき」で、イグニッションとは連動していませんでした。実際、私のログも先頭の経過秒数が0から始まるファイルは98本中1本もありませんでした。

そこで、ログの時間が10分以上飛んでいる箇所と、冷却水温がいったん下がってから再上昇している箇所(=長く駐車してから乗り直した痕跡)を組み合わせて、サイクルの切れ目を推定し直しました。その結果が上の表の(b)です。閾値を1分・5分・10分・2時間と振っても、直後サイクルでの再発症は66.7〜77.8%の範囲に収まりました。「再始動すると再発しやすい」とは言えますが、「必ず再発する」とまでは言えない——これが今回出せる精度です。あくまで推定した境界であって、本物のイグニッション信号ではない点はご承知おきください。

正直に言うと、実測ログを添えて報告している投稿はコミュニティ側に一件も見当たりませんでした。うちの症状に一番近いのは③ですが、「5速にも3速にもならない」という両方のEVギアが同時に排除される状態まで踏み込んだ投稿はゼロでした。

自分の症状がどれに近いか、簡単なチェックリストを置いておきます。

  • 渋滞中や上り坂で発症する → いろは坂系(①)の可能性。本記事の対象外です
  • 下り坂でSOCが高いときに発症する → 回生カット系(②)の可能性があります
  • エアコンを使っているときだけ発症する → ④の可能性。本記事では未計測です
  • 平坦な60km/h巡行でSOC十分なのに発症する → ③、この記事で扱う症状に近いです

今回はどうやって測ったのか、先に限界から言います

2026年のCarScannerログ98本のうち、品質フィルタを通した91本を対象にしました(自分のログの観察値)。EVの代理指標にはエンジン回転数rpm≤50を採用しています。1台・1経路の記録で、気温や交通は統制していない観察データです。

8ラウンドかけて検証しました。round1では原因を特定できず、厳密な条件(奇数段限定・平坦〜下り)では現象自体を再現できませんでした。round2で「6速に滞留しているとEVにならない」という仮説(H-A)が支持され、round3ではH-Aの中身をさらに深掘りし、体感(d)への反証と、range code(ログに出てくる、今何速に入っているかを表す値)の裏取りを行っています。round5以降はバッテリー残量(SOC)との関係に踏み込み、round7でようやく電圧を、round8で変速のタイミングを測りました。

もうひとつ、ログの性格も先に書いておきます。うちの走行は基本的に市街地です。信号で止まって、加速して、少し走って、また止まる。高速道路をほとんど走っていないので、7速のデータは4トリップ分しかありません。この記事では7速の数字は結論に使っていません。「7速でEVが0%」と出ていても、それは制御の話ではなく単にデータが無いだけだからです。

ここで1つ、自分の反省点を書いておきます。round1の「奇数段限定で0件」という見せ方は、偶数段にいる限りrpm>50が構造上ほぼ自明に成立するため、実は循環論法でした。今回はこの欠陥を踏まえた書き方にしています。

60km/hでEVにならないのはなぜ?ギアの「谷」という手がかりが見えました

確定事実から始めます。i-DCDはEV走行・減速回生が奇数段(1・3・5・7速)を介してのみ行われる設計です。奇数段がメインシャフト、偶数段がセカンダリシャフトという二軸構造で、モーターはメインシャフト側に直結されているためです。

EV走行,減速回生は奇数段ギヤを介してのみおこなわれる

Honda R&D Technical Review Vol.26 No.1(J-STAGEで全文公開)、2026年8月1日確認

自分のログの観察値を重ねます。55〜65km/h巡行でのギア滞在は、3速26.3%・5速25.1%・6速47.3%・7速1.2%でした。同じ巡行でも40km/h付近(35〜45km/h)では3速54.0%・5速38.4%・6速0.7%と、6速の滞在比がまるで違います。速度が上がるほど、偶数段である6速に居座る時間が急増する構図です。

60km/h巡行時のギア段別EV走行時間比を示す棒グラフ。5速は約87%、6速は約0%
うちのFREEDの実測ログです。60km/h巡行中、5速にいる時はEVで走れている時間が多いのに、6速にいる時はほぼ0%…!体感じゃなく数字でもちゃんと出ていました。

この差はEV率にも直結していました。5速滞留が続いた31区間はEVゼロの区間が0件(区間EV率99.0%)だったのに対し、6速滞留が続いた84区間はEVゼロが80件(区間EV率0.23%)。60km/hで6速にいる間のEV率は0.0%でした。

35-45km/hと55-65km/h巡行時のギア段別滞在時間比を比較した積み上げ棒グラフ。60km/h帯で6速の割合が大きく増える
40km/hくらいで走ってる時と60km/hで走ってる時、ギアの構成がこんなに違うんです。40km/h帯はほぼ3速・5速なのに、60km/h帯だと6速の滞在比が一気に増えてます。速度によって「詰まりやすいギア」が変わる、というイメージです。

ここで初めて「谷」という言い方をします。3速で走れる実用上限と、5速へ新しく移る速度のしきい値のあいだに、60km/h付近の速度帯がすっぽり収まっているようなんです(自分のログの観察値からの整理で、因果関係の断定ではありません)。この帯域でi-DCDが偶数段側に寄ってしまう理由、つまり制御が「なぜ」そうなるのかは、この時点ではまだ分かっていませんでした。ここから先、バッテリー残量との関係が見えてきます。

アクセルを緩めればEVに戻るのか?「だいたい」ですが確実ではありません

アクセルを緩めた後、10秒以内にEVへ移行できたかを見てみました。40km/h帯では11件中7件が移行し(中央値5.80秒)、60km/h・6速からの開始では13件中7件が移行しました(中央値7.07秒)。いずれも自分のログの観察値です。

もう一つ大事な発見がありました。60km/hで6速から5速へダウンシフトしなかった5件は、EVへの移行が0件でした。ダウンシフトが起きるかどうかが、EVに入るかどうかをそのまま分けているようです。アクセルのゼロ点校正を3通り試しても、この「ダウンシフトなし5件はEVゼロ」という結果は変わりませんでした。

アクセルを緩めた後、6速から5速へダウンシフトした場合としなかった場合のEV移行結果を比較した図
アクセルを軽く緩めた後の10秒で何が起きたかを見てみました。60km/hで6速から5速に落ちてくれた時はだいたいEVに移行できてますが、落ちなかった時はEVにならず…!ただしイベント数自体は少ないので、「絶対効く」とまでは言い切れません。

実践:60km/hでEVにしたいときにやること

先に言っておくと、効果は限定的です。「やれば必ず戻る」ではなく「やらないよりはマシ」くらいに思ってください。

  • アクセルをやや大きめに緩めて、6速から5速へのダウンシフトを誘発する(自分のログの観察値から導いた対処です)
  • ブレーキを軽く当てて回生を誘発する(コミュニティで語られている方法。非公式ソース1件のみで、効果を裏付ける定量データはありません)

ただし、アクセルの下げ幅とダウンシフトの起きやすさの関係は中程度どまりでした(Cliff’s δ=0.400。2つのグループがどれくらい離れているかを0〜1で表す指標で、0.4は「まあまあ違う」くらいの意味です)。SOCや水温はむしろ逆方向に効いていたので、「アクセルを緩めれば必ずダウンシフトする」という強い関係ではありません。イベント数自体も少ないので、「絶対に戻る」とまでは言い切れません。ただ、ダウンシフトを意識するだけでも体感は変わると思います。

体感は当たっていたのか?答え合わせしてみます

round3では60km/h帯を観測した68トリップ中、50本(73.5%)で発症が確認されました。ここが一番書きたかった部分です。3年前からの4つの体感を、実測でひとつずつ答え合わせしていきます。

先に断っておきます。(a)と(c)はround1で使った「アクセルを5秒以上離す」を起点にした定義(母集団26件・24件)、(d)はround3の「60km/h・6速に10秒以上滞留」を起点にした定義(母集団68トリップ)、(b)はround4で推定したサイクル境界を使った定義(母集団23サイクル)です。使っている物差しと母集団が違うので、表の右端に出典を分けて書いています。数字同士を横に比較しないでください。

体感判定実測結果出典・定義
(a) アクセルを5秒以上離すと解消する部分支持評価可能26件中20件が8秒以内にEV移行(5秒必要説は不支持)round1・5秒アクセルオフ定義
(b) 解消後、再始動すると再発する部分支持推定サイクル境界で見ると、解消を含むサイクルの直後のサイクルで16/23(69.6%)が再発症。ただし100%ではないround4・推定サイクル境界
(c) 発症しないこともある支持EV可能条件下24本中22本で発症round1・5秒アクセルオフ定義
(d) 一度解消するとエンジンを切るまで再発しない不支持発症→解消後に再曝露した18本中12本(66.7%)が再発round3・10秒滞留定義
同一トリップ内で6速の症状が解消した後、再曝露した際の再発率を示す図。再発率66.7%
これは正直に書いておきたいところです。一度「あ、直った」となっても、同じ速度域にまた入ると66.7%の確率で再発してました…!「エンジン切るまで一生治らない」は言い過ぎですが、「一回直ったから安心」でもなさそうです。

白状しなきゃいけないことがあります。私、てっきり「一回EVに戻ったらエンジンを切るまでずっとEVのまま」だと思っていました。うちの体感だと、60km/hで一瞬エンジンが止まる、「お、やった!」、でもしばらくするとまたエンジンがかかる、を繰り返している気がしていて。実際にround3で68トリップ分のログを数えたら、一度EVに戻ってから同じ速度域に再突入した18回のうち、12回(66.7%)で再発していました。うちの体感、7割弱外れていたということですね…!データにボコボコにされる私の体感、ちょっと面白くなってきました。

一番自信があった体感(d)が、実は一番脆かった。ここまでが体感の答え合わせです。

コミュニティ定番の「バッテリー保護でしょ」を、電圧で確かめました

「EVならない病」を検索すると、ほぼ必ず出てくる説明があります。「バッテリー保護が働いてるんじゃない?」です。

私もずっとそう思っていました。バッテリー保護というのは、リチウムイオン電池を過充電させないことだ、と。スマホの電池と同じイメージですね。

でも、書きながらひとつ引っかかったんです。EV走行って、電池を「使う」ことですよね。過充電を防ぎたいなら、むしろEVで走って減らしたほうが目的に合うのでは…?と。保護のためにEV走行を止めてしまったら、電池は高いまま張り付いてしまいます。

調べてみたら、この引っかかりは正しかったです。

そもそも「保護」は、種類ごとに止めるものが違います

保護の種類何を守るか実際に止まるもの
過充電保護電池への入れすぎ充電だけ。走行(放電)は止まらない
過放電保護電池の使いすぎ放電だけ。充電は止まらない
過電流保護配線・部品の発熱大電流が続いた方向だけ一時停止
高温保護・低温保護熱や低温による損傷充電・放電の両方
セルバランス電池内の個体差充電時に一部のセルを微調整

電池の保護回路は、充電を止めるスイッチと放電を止めるスイッチが別々に用意されているのが一般的だそうです。だから過充電を検知しても、止まるのは充電側だけ。走ることはできます。

つまり「EV走行そのものを止める保護」は、理屈のうえでは温度がらみのものくらいしかありません(パコ電子工業「保護回路の仕組み」、2026年8月2日確認)。

じゃあ実際、うちの電池は満充電に近かったのか

ここが大事なところです。過充電保護のスイッチになるのは、残量(SOC)ではなく電圧です。というわけで今回はじめて、ハイブリッド/EVバッテリーシステムの電圧というデータを引っぱり出して測ってみました。8ラウンド目にして初登板です。

比べる相手(満充電の目安)はこう出しました。Honda R&D Technical Reviewに、i-DCDのバッテリーは「22 kW / 173 V」と書かれています。リチウムイオンの公称電圧は1セルあたり3.6Vなので、173÷3.6でだいたい48セル。満充電は1セル4.1〜4.2Vとされているので、48倍して196.8〜201.6Vが目安になります。

※セル数を「48」と直接書いた公式資料は見つけられませんでした。173Vからの逆算です(Honda R&D Technical Review Vol.26 No.1「SPORT HYBRID i-DCD用IPUの開発」Table 1、2026年8月2日確認)。

状態電圧の中央値最大セル1個あたり
SOC85%以上・6速でエンジンON(=発症中)179.69V187.20V3.900V
充電中の最大値(全SOC)192.12V4.002V
リチウムイオンの一般的な満充電域196.8〜201.6V4.1〜4.2V
55-65km/h巡航時のHVバッテリー電圧をSOC帯と走行状態別に示した箱ひげ図。48セル×4.1Vの基準線に届いていない
赤い横線が「48セル×4.1V=196.8V」の目安です。どの箱もその下にしっかり収まってます。うちの電池、思ったより余裕ありました…!

上限まで9.6V以上、余っていました。一度も張り付いていません。

ということは、EVにならない場面で、うちの電池は「これ以上入れたら危ない」という状態にはなっていなかったことになります。過充電保護でEVが止まっていた、という説明は成り立ちません。(自分のログの観察値です。セル1本ずつの電圧までは測れていないので、特定のセルだけが上限に近い可能性は残ります)

ついでに「電池が出せる電力が絞られているのでは」という説も見てみました。EV走行中に実際に出ている電力はSOCが低いときで8.62kW、高いときで8.64kW。ほぼ同じです。こちらも不支持でした。

ひとつだけ、確かめられなかったこと

電池の温度です。CarScannerに「Battery Coolant Temperature」という項目があったので期待して開けたんですが、17本のログ全部が-40℃で固定でした…!センサーが応答していないときに返ってくる値ですね。同じように「Battery Module Power」「Motor Inverter Current」「Generator Motor Speed」も全部0.00のまま、「TCM Transmission Temp」も1つの値で固定でした。

というわけで温度保護説だけは、否定も肯定もできず判定不能のままです。次回のログで取り直します。

なぜ6速が選ばれるのか?かなり絞り込めました(核心はまだですが)

先に言っておくと、さきほど触れた「奇数段限定で0件」という見せ方は循環論法なので、ここでも使いません。

range codeがギア段を正しく表しているかどうかは裏取り済みです。速度÷回転数の比を実測し、公称の変速比と比べたところ、平均絶対相対誤差0.9%で一致しました(計算による推測・code1のみ未確認)。ちゃんとギア段として読めているデータだと考えています。

range codeごとの速度/回転数比と公称変速比を比較した検証グラフ。平均絶対相対誤差0.9%で一致
そもそも「6速にいる」ってどうやって確認したの?というところの裏取りです。速度÷回転数の比を実測して、公称の変速比とほぼ一致してることを確認済み(誤差0.9%)。ちゃんとギア段として読めているデータです。

そのうえで、round5以降でバッテリー残量(SOC)を軸に測り直しました。ここからが今回いちばんの収穫です。

6速に居座る現象は、バッテリー残量と結びついていました

SOCが85%を超えると、55〜65km/h巡航での6速滞留率が72.5%まで跳ね上がります(85%未満の帯は32.6〜47.4%)。同じときEV走行の時間比は20.5%まで落ちます。

ちなみに「エンジンでの充電は80%くらいまで」という話を私も信じていたんですが、これは外れでした。充電が終わったときのSOCは中央値67%・最大89%で、80%を超えていたケースが21.9%あります。変化が起きる境目は80%ではなく85%のあたりでした。

ここで私はこう疑いました。「これ、見かけの相関じゃないの?」と。速度が高い場面とバッテリーが高い場面が、たまたま重なっているだけかもしれない、と思ったんです。

そこで速度・アクセルの踏み込み量・加速度をそろえて比べ直しました。同じような条件の場面同士だけをペアにして比較する、という方法です。

5速のEV時間比を、条件をそろえる前と後で比較した棒グラフ。そろえた後も高SOCで低いまま
左2本が生の数字、右2本が速度・アクセル・加速度をそろえた後です。そろえても差は消えませんでした…!私の「見かけの相関でしょ」という読みは外れです。

結果、5速でEVになっている時間の比率は、条件をそろえても36.6%→22.4%。14.2ポイントの差が残りました。念のため別の組み方でもう一度計算し直したら、差は21.3ポイントとむしろ広がりました。数字の幅は組み方で動きますが、向きは変わりません見かけの相関ではありません。

「入れたはずなのに、入らなかった」場面を数えました

もっと直接的な聞き方をしてみます。実際に5速EVが成立している運転条件(速度・アクセル・加速度)にぴったり当てはまっているのに、6速のままだった時間はどれくらいあるのか。

5速EVが成立する条件の範囲内で6速エンジンONだった時間比をSOC帯別に示した棒グラフ。85%以上で34.9%
同じ速度、同じアクセルの踏み方をしていても、バッテリーが多いときのほうが6速を選ばれやすい、ということですね。

SOCが80%未満だと26.7%。85%以上だと34.9%。8.2ポイント増えます。

6速に「入りやすい」のか「出にくい」のか

これ、制御としてはまったく別物なので、分けて測りました。

結果は「入りやすくなっている」でした。5速から6速への切り替わりは高SOCで1.37倍。一方、6速から下の段へ落ちる速さは、高SOCのほうがむしろ速いくらいでした(10秒以内に落ちる割合が54.0%→70.3%)。居座っているのではなく、入りやすくなっている。ここは私の想像と逆で、意外でした。

発症中、電池には何が流れているのか

これも今回わかりました。SOC85%以上で6速走行しているとき、電池から出ている電力は中央値0.50kW。1kW未満が90.1%を占めていました。

この大きさは、モーターが車を押している電力ではありません。エアコンや電装品を動かすくらいの量です。つまり発症中の電池は、走りには関わっていなくて、車内の電気をまかなっているだけ、というイメージですね。

あわせて、SOC85%未満だと6速走行中の89.2%が充電中なのに対し、85%以上では充電が27.5%まで減ります。高いときは充電もしていない。この状態を一言でいうと「EVでもなく、充電でもなく、ただエンジンで走っている」です。

ちなみに、私の予想はもう一回外れました

うちのログは市街地中心です。だったら「加速で6速まで上がったあと、次の信号までが短くて5速に落とす暇がないだけ」じゃないか、と考えました。我ながらいい線だと思ったんですが、測ってみたらきれいに外れました。

  • 6速に留まる時間は、SOCが高いときのほうがむしろ短い(中央値5.04秒 vs 7.36秒)
  • 1kmあたりの停止回数が多い(=信号が多い)トリップほど、6速率は低い
  • 信号の多さで3グループに分けても、どのグループでもSOCが高いと5速EVは23.0〜26.1ポイント落ちる

もうひとつ、「5速はギア比の関係でモーターの力が足りないのでは」という説も自分で計算してみました。N·m(ニュートンメートル)というのは、回そうとする力の強さの単位です。

60km/h巡航で5速EVに必要なモーターの力は約17.6N·m。i-DCDのモーターは最大160N·mなので、使っているのは11%。全然足りています。こちらも外れです(1.0m/s²くらいで加速すると約115N·m=7割まで上がるので、加速の場面では効くかもしれません)。

※これは実測ではなく、車重1530kg・タイヤ半径0.305m・空気抵抗などを仮定した私の手計算です。仮定が変われば数字も変わります。モーターの最大トルク160N·mはHonda R&D Technical Review Vol.26 No.1のTable 1の値です。

体感が外れるのはもう慣れましたが、データを見たうえで立てた仮説まで2つ続けて外れるのはなかなか堪えますね…!でも外れたおかげで「市街地だから」「モーターの力不足だから」という言い訳が消えて、SOCとの結びつきがより濃くなりました。

で、結局なぜ6速なのか

すみません、そこはまだ分かりません。ただ、「何ではないか」はかなり潰せました

判定
過充電を防ぐための保護不支持(電圧に9.6V以上の余裕)
電池が出せる電力が絞られている不支持寄り(EV放電の上限はSOCでほぼ変わらず。ただし測れたのは実際に出ていた電力で、車が許容していた上限そのものではありません)
速度やアクセルの違いによる見かけの相関不支持(そろえても14.2pt残る)
市街地の信号サイクルによる変速タイミング不支持(6速滞留はむしろ短い)
ギア比によるモーターの力不足不支持(巡航なら定格の11%で足りる)
電池の温度による保護判定不能(センサーが応答せず)
充電が要らないので、エンジンで走る運転点を選んでいる消去法で最有力。ただし直接の証拠なし

残っているのは「充電が要らないから、EVを使う理由がない」という説明です。ただしこれは消去法で残っただけで、それを裏付ける直接の証拠はありません。エンジンの効率が本当に有利だったのかも、今のデータでは確かめられませんでした。

あと、大事な限界をひとつ。「6速にいるからEVにならない」のか「EVにしない判断の結果として6速にいる」のか、この向きはログでは決められません。ECUの中で何を要求しているかは、外からは見えないためです。

なお、この症状が珍しい条件かというと、そうでもありませんでした。SOC85%以上は走行時間の13.7%、51トリップ中43本で起きています。走り出してから中央値14.9分、行程の35.6%あたりで到達していました。日常的に通っている領域です。

ネットで見かける「◯◯km/h以上が境界」のような具体的な数字は、今回の記事ではあえて引用していません。個人が調べた1件の情報にすぎず、独り歩きさせたくないためです。

この記事が役に立たない人は?

  • 渋滞中・上り坂で発症する人(いろは坂系。今回とは別現象です)
  • エアコンが疑わしい人(本記事では未計測です)
  • すでにディーラーで重大な故障診断が出ている人(クラッチ滑りなどは対象外です)

次は何を調べるのか?

正直に言うと、今のログには限界があります。先頭のSECONDS値の中央値は37,928.2秒で、0秒から始まるファイルは98本中0本でした(自分のログの観察値)。つまり「1つのCSV=1回のイグニッションサイクル」という前提自体、まだ確証がありません。

次はCarScannerのターミナル機能かカスタムPID(車から読み出せるデータ1項目ずつに付いている番号のこと)で、イグニッションON/OFFに相当する信号を直接記録する計画です。それができれば、今回は推定に頼るしかなかった体感(b)を本物の信号で確かめられますし、不支持だった体感(d)ももっと正確に検証できるはずです。

あわせて、今回「これが取れていれば決着したのに」と思ったデータを書いておきます。同じ車で調べている方の参考になれば。

  • 使える電池温度(今回は-40℃固定で死んでいました)。これが取れれば温度保護説を直接たたけます
  • 目標ギアと、変速を保留している理由。これがあれば「6速にいる理由」が一発で分かります
  • EV走行/エンジン走行の要求信号。因果の向き(6速だからEVにならないのか、EVにしないから6速なのか)を決められます
  • 電池が許容している充放電電力と、保護フラグ。「保護が働いているか」を推測でなく直接読めます
  • セル1本ずつの電圧。特定のセルだけ上限に近い、というケースを潰せます

電池温度については、CarScannerのセンサー一覧で別の名前のものが使えないか探してみます。見分け方はかんたんで、-40のまま動かない・0.00のまま・キリの悪い値で固定・255に張り付きならそのPIDは死んでいます。外気温より少し高い値で、走ると数字が動くなら本物です。

post 58から始まったこの調査、まだ終わっていません。

自分でも測ってみたい人へ

自分の車の「謎」をOBDログで調べてみたい人向けに、うちが使っているアダプタを紹介しておきます。詳しい選び方は別記事でも書いています。

ひとつだけ、買う前に気をつけてほしいことがあります。iPhoneで使うなら「MX+」を選んでください。OBDLinkには下位モデルもあるのですが、メーカー公式サイトに「iOS非対応」とはっきり書かれています(OBDLink公式、2026年8月2日確認)。うちはiPhoneのCarScannerで記録しているので、MX+じゃないとそもそも始まりません。

ScanTool OBDLink MX+(Bluetooth OBD2アダプタ・iOS対応)

この記事のログは全部これで取りました。2023年の121本も、2026年の98本も。

Amazonで見る

よくある質問

Q1. これは故障ですか?

仕様の可能性が高いですが、断定はできません。バッテリー残量との結びつきは今回はっきりしましたが、ECUがなぜその判断をしているのかまでは、外から読めるデータでは確かめられないためです。

Q2. 「バッテリー保護」が原因って本当ですか?

少なくとも過充電を防ぐための保護ではありません。うちのログでは、症状が出ている間のバッテリー電圧はセル1個あたり3.900Vで、満充電の目安(4.1〜4.2V)まで余裕がありました。そもそも過充電保護は充電を止める仕組みで、走ること(放電)は止めません。

ただし「保護」には温度によるものもあり、そちらは電池温度のデータが取れなかったので判定できていません。「保護ではない」と全部を否定できるわけではない、というのが正確なところです。

Q3. 自分の症状も同じですか?

記事前半のチェックリストで確認してみてください。渋滞中や下り坂での発症は、今回の症状とは別系統の可能性があります。

Q4. アクセルを離しても直らない時はどうすればいいですか?

6速から5速へのダウンシフトを誘発するか、ブレーキを軽く当てて回生を誘発する方法があります。後者は非公式ソース1件のみで、定量データはありません。

Q5. ネットで見る「◯◯km/hが境界」という数字は本当ですか?

個人が調べた非公式ソース1件のみの情報で、本記事では採用していません。年式やグレードによる差も検証されていない数字です。

Q6. 次はいつ分かりますか?

イグニッション信号を直接記録できる計測方法を準備中です。まとまり次第、また記事にします。

関連する記事はこちらもどうぞ!

まとめ

3行にまとめます。①60km/hは「6速の谷」にいるだけの可能性が高いです(自分のログの観察値)。②その6速に入りやすくなる引き金はバッテリー残量が85%を超えることでした。③ただしよく言われる「過充電を防ぐバッテリー保護」ではありません。電圧に余裕があったからです。

  • 分かったこと:60km/hのEV不発は6速滞留とほぼ一致(5速滞留はEVゼロ0件・6速滞留はEVゼロ80件)
  • 新しく分かったこと:SOC85%を超えると、同じ速度・同じアクセルでも6速を選ばれやすくなる(26.7%→34.9%)
  • 否定できたこと:過充電保護説(セル電圧3.900V・上限まで余裕あり)、出力制限説、見かけの相関説、市街地の変速タイミング説、モーターの力不足説
  • だいたい効く対処:アクセルを緩めて6→5のダウンシフトを誘発する
  • 外れた体感:「解消後は再発しない」は66.7%の再発率で不支持
  • まだ分からないこと:なぜECUが6速を選ぶのか。電池温度による保護の可能性も未確認

原因そのものの特定はできませんでした。それでも、「バッテリー保護でしょ」で止まっていた話を、実測でひとつずつ潰せたのが今回の収穫だと思っています。消去法で残ったのは「充電が要らないから、EVを使う理由がない」という説明ですが、これはまだ推測の域を出ません。

私の予想は、体感が1つ、データを見てから立てた仮説が2つ、合計3つ外れました。悔しいですが、外れた分だけ選択肢が減ったということでもあります。

というわけで、3年越しの宿題はこんな感じでした!体感がボコボコにされたのは悔しいですが、データに教えてもらえるのはやっぱり面白いです。次のログが貯まったら、また続きをやりますね。では今回はこの程度で〜!

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この記事を書いた人

どうもこんにちは!marronです!看護大を卒後、地域病院で8年勤め2023年は二人目の娘に恵まれ現在育休中。育休を機にブログ再開。趣味のカメラやPC関連の研究ができたらいいなーと思っております。

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